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酸化とは(脂質酸化の入門1)
2025年10月17日

化学レベルで見る酸化

 油脂(脂質)の酸化とは文字通り、脂質に酸素が結合する反応ですが、もう少し化学的に見ていきましょう。
 私たちの身近にある脂質にはリン脂質やトリアシルグリセロール、コレステロールエステルと言われる脂質があります。リン脂質は細胞膜を構成する脂質であり、トリアシルグリセロールはエネルギー体として身体に蓄えられています。またコレステロールエステルも身体の中をエネルギーの輸送体として巡っています。これらの脂質は身体の中で生合成される他、食事からも摂取していることになります。
図1 脂質の構造  図1を見てもらいたいのですが、これらの脂質はその構造に脂肪酸と言う構造を持ちます(脂肪酸構造を持たない脂質もあります)。脂肪酸にはオレイン酸やリノール酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあり、どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。リン脂質には2つの脂肪酸が結合しており、トリアシルグリセロールには3つの脂肪酸が結合しています。たとえ同じリン脂質であってもその構成脂肪酸の種類、そしてその組合せが様々なので、脂質というのは極めて多様な分子群であると言えます。 脂肪酸の構造  ところで脂肪酸は炭素の数(鎖長)と二重結合の数などが異なっており、これによって脂質の性質は大きく変わってきます(図2)。例えば融点などです。また酸化の観点から見ると、二重結合が多ければ多いほど酸化されやすくなってきます。DHAが脳に身体に良い、みたいなことは聞いたことがあるかと思いますが、一方でDHAは二重結合を6つも持つために非常に酸化しやすく、よって酸化しないように企業努力がなされているわけです。
 それでは次回はこれらの脂肪酸がどのように酸化していくのかを述べていきたいと思います。

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